個人事業主の方から、
「そろそろ法人化した方がいいでしょうか?」
という相談を受けることがあります。
ひと昔であれば、この質問に対する答えは比較的シンプルでした。
利益が一定以上出るようになったら法人化を検討する。
その最大の理由は節税です。
実際、ひと昔前までは法人化による節税メリットが非常に大きく、多くの経営者が税金対策を目的として法人化を選択していました。
しかし、現在は状況が大きく変わっています。
もちろん法人化による節税効果がなくなったわけではありません。
ただ、節税効果を上回るデメリットがあります。
その大きな理由の一つが、社会保険料の存在です。
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税金だけでは判断できない時代になった
法人化のシミュレーションを行うと、税金だけを見れば有利になるケースは今でも少なくありません。
所得税は超過累進税率のため、個人事業の場合は利益が増えるにつれて所得税率が高くなります。
一方、法人の場合基本的に一定税率です。
また、役員報酬を設定し、法人と個人に所得を分散することができるため、税負担を抑えられる可能性があります。
そのため、数字だけを見ると、
「法人化した方が税金は安くなる」
という結果になることもあります。
ところが、ここで見落とされがちなのが社会保険料です。
法人化すると社会保険料の負担が大きく変わる
法人になると、原則として社会保険への加入が必要になります。
経営者ひとりだけの会社であっても例外ではありません。
個人事業主の場合は国民健康保険と国民年金ですが、法人化すると健康保険と厚生年金へ加入することになります。
そして重要なのは、社会保険料は本人だけでなく会社も負担するという点です。
例えば月額30万円の役員報酬を設定した場合、本人負担で約15%、会社側にも約15%、合計約30%の社会保険料負担が発生します。
つまり、会社全体で見ると想像以上に大きなコストになるのです。
税金だけを見ると得をしているように見えても、社会保険料まで含めると手残りがほとんど変わらない、あるいは逆に減ってしまうケースもあります。
私は法人化シミュレーションを行う際、税額だけでなく社会保険料も含めて説明していますが、その結果、お客さまが
「思ったよりメリットがないですね」
という反応になることも少なくありません。
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それでも法人化する人が増えている理由
では、法人化する意味がなくなったのでしょうか。
私はそうは思いません。
むしろ現在は、法人化の目的そのものが変わったのだと考えています。
昔は節税が主な目的でした。
しかし今は、事業を成長させるための手段として法人化を選ぶケースが増えています。
例えば、金融機関から融資を受ける場面では法人の方が有利になることがあります。
また、従業員を採用する場合や大手企業と取引する場合にも、法人の方が信用を得やすいケースがあります。
事業承継や組織化を見据えた場合も、法人の方が柔軟に対応できます。
つまり法人化は、税金を安くするための仕組みというよりも、事業を大きくするための器として考えるべきものになってきているのです。
まとめ
昔は法人化の最大の目的が節税でした。
しかし現在は、社会保険料負担の影響が大きくなったことで、税金だけで判断できる時代ではなくなっています。
税額だけを見ると有利でも、社会保険料まで含めると想定していたほどのメリットが出ないケースも珍しくありません。
そのため私は、
「節税のためだけの法人化」
はおすすめしていません。
むしろ、
「事業を大きくしたい」
「人を雇いたい」
「融資を受けたい」
「会社として成長したい」
という目的がある場合にこそ、法人化を検討する価値があると考えています。
法人化は節税テクニックではなく、事業を次のステージへ進めるための経営判断です。
これから法人化を検討する方は、「税金がいくら安くなるか」だけではなく、「どんな会社にしていきたいか」という視点でも考えてみてはいかがでしょうか。
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